2018年11月20日(火)

 

自治体向けのビジネス協業推進のため

AppExchangeビジネスプランコンテストを実施

 行政の生産性向上や働き方改革を推し進めるため、政府がデジタル・ガバメントの実現を目指す中、全国の自治体からクラウドなどを活用した先進的な施策事例が次々に出始めています。もちろんこの動きは、セールスフォース・ドットコムとパートナーの皆様にとって大きなビジネスチャンス。セールスフォース・ドットコムは現在、パートナーの皆様に対して、自社の持つ先進技術や自治体業務に関する知見をSalesforceに実装・連携し、自治体向けビジネスをともに推進していくための支援を強化しています。そして、その一環として2018年8月に発表したのが、「SGS(Salesforce Government Solutions)自治体パートナーエコシステムプログラム」です。
 このプログラムの目玉のひとつとして、既存のパートナー企業および新規のパートナー申請予定企業の皆様を対象に、2018年10月、「自治体向け新規AppExchange製品ビジネスプランコンテスト」を実施しました。自治体の課題の解決につながるAppExchange製品の拡充を狙いとするこのコンテストには、市場性や発展性などの面で非常に優れたアイデアやビジネスプランが数多く寄せられました。それらの中から、厳正な審査の結果、見事大賞に選ばれたのが、ネオス株式会社(東京都千代田区)のスマホアプリ「Gomi SAMURAI」です。

 このアプリは、Salesforce Einsteinの画像認識AIであるEinstein Visionを活用し、スマホで撮影したものをどんな種類のごみに該当するか判別する、というもの。“侍”のキャラクターが、「これは『ペットボトル』でござるな」等と分別し、撮影地のGPS情報をもとに「おぬしの場所では、資源ごみでござる」「水曜日の朝8:30までに出すのじゃ」とその地域における捨て方を教えてくれます。また、分別への協力のお礼として、その地域に関するお役立ち情報をあわせて表示する機能も備えています。



パートナーとして差別化を図るべく
急成長ITベンダーがコンテスト参加を決意


  

ネオス株式会社サービスソリューション事業部 Salesforceソリューショングループ (左)岩井氏、(右)佐藤氏


 このユニークなアプリを開発したネオスは、2004年に設立された総合ITソリューション企業です。主な事業領域は3つ。顧客企業のあらゆるニーズにワンストップで対応できる総合力の高さを強みとし、スマホのプリインストールアプリや大手航空会社・チケット販売会社の座席予約システムなど、法人向けのプロダクトやサービスを幅広く展開するソリューション事業。教育やメディアなどに関する専門的な知見と独自のテクノロジーを駆使し、豊富なコンテンツを提供するコンテンツ事業。さらに、飲食店やタクシーの利用者用のタッチパネル式端末などを開発・製造する株式会社ジェネシスホールディングスを連結子会社化し、急速に拡大しているデバイス事業。会社設立からわずか4年後の2008年に東証マザーズへ上場し、2012年には東証一部への市場変更を果たした同社は、これらをビジネスの3本柱として現在も成長を続けています。

 そのように企業規模の大小を問わず、法人顧客に関して圧倒的な実績を有する同社。しかし、自治体向けビジネスに限っていえば、サービスソリューション事業部の佐藤夕佳氏によると、これまで会社全体としてあまり強く意識してこなかったといいます。にもかかわらずなぜ今回、「自治体向け新規AppExchange製品ビジネスプランコンテスト」に応募しようと考えたのでしょうか?

「当社はセールスフォース・ドットコムのパートナーとしては2018年5月からと後発組なので、まずは実績を作っていく必要がありました。ただ、セールスフォース・ドットコムには優秀なパートナー企業がすでにたくさんいらっしゃるので、そうした方々と同じことをするだけでは太刀打ちできず、なかなか注目されません。なにか別の視点で考えなければと、セールスフォース・ドットコムのパートナー会やパートナーオフィスアワー(パートナー向けウェビナー)などに参加して模索する中で、たどり着いた答えが自治体向けビジネスでした。これこそ当社の今の立ち位置に一番マッチするし、セールスフォース・ドットコムが力を入れている分野でもあって、いいアピールになる。そう考えてコンテストへの応募を決めました」(佐藤氏)

  

ネオス株式会社 サービスソリューション事業部 Salesforceソリューショングループ 佐藤氏

 



外国人スタッフの日頃の悩みがヒントに
自治体ビジネス未体験でも自社の強みを発揮


 Salesforce Einsteinを利用してごみを分別するというアイデアは、2017年にベトナム現地法人を設立した同社に多数在籍するベトナム人スタッフから挙がったものだそうです。

「彼らがゴミを捨てるとき、商品名はわかっても、『使い捨てカイロ』のような一般名詞は知らない場合が多く、自治体のホームページなどで検索しようにもできずに困っているらしいのです。地域住民、特に外国人によるごみ収集のトラブルが各自治体で問題化しているというニュースは日頃から耳にしていましたし、この課題を解決できるようなアプリがあればおもしろいなと。さらに、単純にどんなごみかを判別するだけでなく、位置情報を使って『それはあなたの地域では不燃ごみですよ』と二段階で情報を出せば、より便利になるのではないかと考えました」(佐藤氏)

 Salesforceの最新技術を応用した「Gomi SAMURAI」には、英語対応だけでなく、日本ならではのキャラクターを用い、判別できないときには「すまぬ…判別できぬ…」と侍が土下座するなど、外国人にも受け入れられやすい工夫が随所に盛り込まれています。とはいえ、実用化にこぎつけるまでの道のりは平坦ではなく、さまざまな問題や苦労があった、と佐藤氏は回想します。

「当初はSalesforce Einsteinに関する知識を持っている人間が社内におらず、セミナーに参加したりして手探りのところから始めました。ただ、当社にはベトナムの優秀なエンジニアが多く在籍しています。彼らは英語でもすんなりと読めて情報のキャッチアップと理解が速く、わからないことにもどんどんチャレンジしてくれる。Salesforceに関しては特に頼れる存在です。『Gomi SAMURAI』の開発においては、まさしくそういう当社の強みを発揮できたのではないでしょうか」(佐藤氏)


  
ネオス株式会社サービスソリューション事業部 Salesforceソリューショングループ (左)岩井氏、(右)佐藤氏

 




自治体IT化の過程で生まれる巨大市場
自社技術とSalesforceの連携が成長のカギ


 ごみの分別という自治体共通の課題の解決に向け、大きな期待を抱かせる「Gomi SAMURAI」。佐藤氏は、ごみの判別機能やGPS機能の精度向上、ごみ出しカレンダーとの連携、多言語対応などまだまだ課題はあるものの、それらをクリアして1年以内の製品化を目指す、と意気込みを語ります。今回のコンテストに参加するまであまり経験のなかった自治体向けビジネスについて、今どのような展望を持っているのでしょうか?

「自治体は今後、これまで利用してきたシステムから脱却して、IT化、クラウド化を進めていかなくてはならず、そこに大きな市場が生まれるのは間違いありません。先日の『地方自治情報推進化フェア』(主催:地方公共団体情報システム機構)にも本当にいろいろな企業が出展・参加していて、自治体向けビジネスが大きく盛り上がりつつあるのを実感しました。『Gomi SAMURAI』にしても、全国の市町村の1割に導入できれば、非常に大きなビジネスになる。当社には、民間向けのシステムやアプリの開発・導入に関する豊富な技術と実績があります。セールスフォース・ドットコムのパートナーとして、今後はそれらをいかにSalesforceと絡めて自治体向けビジネスに応用していくかが、さらなる成長のカギになると考えています」(佐藤氏)

 職員の業務削減や住民サービスの向上、福祉・子育て支援など、自治体の課題には共通項が多く、優れたソリューションであれば横展開しやすい側面があります。今回のネオスの取り組みは、まさにその利点を象徴する事例となるのではないでしょうか。



佐藤夕佳氏 
サービスソリューション事業部 Salesforceソリューショングループ サブリーダー <Salesforce認定Sales Cloudコンサルタント>

「パートナーとしていかにSalesforceビジネスの実績を上げていくか、という視点で注目し始めた自治体向けビジネスですが、今はその可能性の大きさを肌で感じています」