2018年3月2日(金)



日立グループのIT中核企業がSalesforce自社導入を契機に
パートナーシップを開始


株式会社日立ソリューションズ(東京都品川区)は、日立グループにおいて情報・通信システム事業分野の中核を担うシステムインテグレーターだ。その最大の強みは、1970年の設立から半世紀近くにわたり培ってきた技術力と、新たなものに挑戦する機動力。情報処理技術者試験等合格者やベンダー資格取得者など、社内に多数在籍する優れたITエンジニアが、豊富なソリューションを組み合わせ、顧客の経営課題に対する最適解をワンストップで提供する「ハイブリッドインテグレーション」を特長とする。営業範囲は国内に留まらず、北米・欧州・アジア各国に拠点を設置し、グローバル展開にも積極的だ。
 そんな同社がセールスフォース・ドットコムのソリューションパートナーとなったのは2006年。きっかけとなったのは、前年の2005年にSalesforceを自社に導入したことだ。ビジネス・アプリケーション本部セールスフォース部の亀山源太氏はいう。
「当時、弊社は営業面であまり思わしくない状況にあり、それを打破するには何らかのツールが必要であると考えてSalesforceを導入したのです。そして実際に使ってみたところ、導入のスピード感や柔軟なカスタマイズ性など、高い効果を実感でき、すっかりSalesforceのファンになってしまいました。当時はまだクラウドという言葉すら一般的ではありませんでしたが、今後こういう製品が必要とされる時代が必ず来る、と確信しました。実際に利用してノウハウもたまっていましたし、それならいっそ事業化しようということで、セールスフォース・ドットコムとのパートナーシップを開始したのです」(亀山氏)


 

株式会社日立ソリューションズ 亀山 源太氏 (左)、株式会社セールスフォース・ドットコム カスタマーサクセスディレクター 森 (右)



定着化支援サービスで見えてきた
Salesforceの“生きた使い方”


同社セールスフォース部がパートナーとして特に力を入れているのが、顧客に対してSalesforceの定着化を促すサービスだ。
「セールスフォース・ドットコムのパートナーとなってしばらくの間は、単にSalesforceを構築して納品するという、一般的なシステムインテグレーターと変わらない形でサービスを提供していました。ところがそれだと、お客様の中には、利用方法がよくわからなかったりして、Salesforceの効果を実感する前に使わなくなってしまい、結局解約してしまう方が少なからず出てきてしまう。要は“売って終わり”という、システムインテグレーターにありがちな状態になっていたわけです。
 パートナーとしてSalesforceを扱う以上、お客様の数を増やすことはもちろんですが、契約の更新率を上げることも大切な業務ですから、なんとか改善しなければならない。ただ当時、社内では定着化の重要性に対する意識が低く、それを専門に扱う部隊やノウハウもありませんでした。そこでまずは、お客様の状況を正確に把握するところから始めようと考えたのです」(亀山氏)
 そう認識を新たにした亀山氏は、定着化活動の基盤となり得る顧客の情報が、実は各部門の日々の活動を通じて社内に蓄積されていることに気づいた。営業部門には、顧客の予算やSalesforceの利用状況などの情報が日常的に入ってくる。一方サポート部門にも、Salesforceの使い方などに関する問い合わせが次々と寄せられる。亀山氏は、そうした情報に意識を傾けることによって、システムエンジニアとして通常の業務をこなしていたときには見えなかった世界が見えてくるようになった、と語る。
「それまで何年もSalesforceの導入に携わってきて、知識についてはその辺の者には負けない、という自負がありました。しかし、実際のところそれは機能として知っているだけという表面的なもので、実業務での使い方とでは大きな開きがあることに気づいた。定着化の世界に飛び込んで初めて、そういう“生きた使い方”が見えてきました」(亀山氏)

 

 




顧客の声に耳を傾け
さまざまな定着化支援を実践

 
そうした意識改革を経て、亀山氏の業務は大きく変わった。営業部門やサポート部門に対する顧客からの要望や相談を吸い上げ、それをもとに実際に顧客を訪問してその場で解決したり、使い方をレクチャーしたりして定着化を促進する。これが日課となった。
 同時に亀山氏は、Salesforceの定着化に寄与するさまざまな施策を実行に移していった。そのひとつがLightning Experienceへの移行支援サービスだ。Salesforceは、従来のSalesforce Classicから、2015年にリリースされた新インターフェースLightning Experienceへ切り替えることで、利用できる機能が格段に増え、そのメリットを最大限享受できるようになる。ただ、使い慣れたインターフェースを変更することに躊躇する顧客も少なくない。そこで亀山氏は、円滑な移行を支援し、顧客の業務におけるSalesforceの価値を向上させることによって、結果として利用の定着化につなげようと考えたのだ。
 さらに、Salesforceを利用する企業を数多く抱える日立グループ向け、あるいはグループ外の顧客企業向けに、Salesforceの活用方法を解説するイベントやセミナーを定期的に開催。これまでに蓄積してきたSalesforceに関するノウハウを顧客と共有し、いっそうの定着化に取り組んでいる。
「たとえばお客様に機能を説明するにしても、イベントを企画するにしても、自ずと視点や方法が変わってきました。当然ですが、お客様は、何かしらの課題を抱え、変えたいけれどなかなか変えられない、という状況に陥っていたからこそSalesforceを導入したわけです。また、お客様の業種やITリテラシーには幅があり、使い方にもいろいろな違いがあります。定着化サービスに携わるようになって、言葉でわかっていたつもりになっていたそういう部分がようやく現実味を帯び、理解できた気がします」(亀山氏)




定着化で培ったノウハウの
自社サービスでの活用も視野に


定着化サービスの本格的な提供開始から1年、今では社内外で「Salesforceの亀山さん」と呼ばれているという亀山氏。顧客から「どんなに便利なITツールでも、やはり大事なのは人だね」と声をかけられるのが何より嬉しい、と笑みを浮かべる。
 ただ、完全に満足しているわけではない。前述の通り、現時点における同社の定着化サービスは、顧客からの声に応える形で提供される“リアクティブ”なものが多い。今後は、たとえば顧客に対してSalesforceアクセラレータのような短期集中型の1on1支援サービスを提供したり、顧客の課題を積極的に聞き出して他社のSalesforce活用事例を紹介したりといった、より“プロアクティブ”な定着化サービスを充実させていく方針だ。そのために、2018年9月頃をめどに、定着化サービスをはじめとするリセラー業務に特化した部隊をひとつの「課」として新設する予定だという。
「当面の目標は、とにかく契約更新率を向上させることです。定着化サービスによって契約を解除しそうだったお客様が留まってくれた、業務における活用領域が広がった、といったケースがどんどん増えていくといいですね。
 そして長期的には、Salesforceを通じて培った定着化のノウハウを、弊社の提供しているさまざまな製品の定着化にも活用していきたいと思います。定着化が重要だというのは、何もSalesforceに限った話ではなく、どんなサービスにも同様にいえることです。お客様に寄り添って業務を理解した上で、スピード感のあるサービスを提供し、『日本一のクラウドのインテグレーターになる』というセールスフォース部の大きな目標を達成したいと考えています」(亀山氏)
 亀山氏の指摘する通り、Salesforceの導入・定着化サービスを提供することによって蓄積される知識や経験は、パートナーのその他のビジネスにおいても大いに活用できるものであるはず。そして、それこそが“真の協業”であり、セールスフォース・ドットコムのパートナープログラムの目指すところなのだ。





亀山 源太氏 ビジネス・アプリケーション本部 セールスフォース部
「パートナー企業の皆様には、ぜひ一度セールスフォース・ドットコムの本社を訪れて、現場のスピード感や熱量を体感して欲しいですね。そこで感じる“生きた使い方”は、定着化サービスやさらなる展開に取り組む上で大きなヒントになるのではないでしょうか」